適応障害とは?症状や原因、なりやすい人、セルフチェック方法を解説
「仕事の日は憂うつだ」
「出勤すると冷や汗が出たりめまいがしたりする」
このような症状が現れる場合は、適応障害(てきおうしょうがい)の可能性があります。
適応障害とは、何らかのストレスによって、抑うつ気分(落ち込んだ気分が続くこと)や不安が強く現れ、日常生活に支障をきたしている状態。うつ病の一歩手前といわれており、適切な治療が必要です。本記事では、適応障害の概要をはじめとして以下を解説します。
- 原因
- なりやすい人の特徴
- 症状とセルフチェック方法
- 診断基準
- 主な3つの治療方法
日々の生活や仕事において「心」や「体」に不調を感じる方は、参考にしてください。
適応障害とは?
適応障害とは、何らかのストレスにより心や体、行動の症状が出現して、社会生活に支障をきたしている状態。日常生活が送れないほどに不安や焦り、抑うつ気分が現れています。
社会政策学の日本における「適応障害」患者数の増加によると、適応障害の患者数が「2008年から2017年にかけて41,000人から101,000人に増加している」という報告があります。
治療方法は、原因であるストレスの除去やストレスへの対処方法の取得、薬による治療などです。日本の労働環境の課題として、適応障害のみならず、心の病気にならないためのメンタルヘルスの改善が大切です。
出典:社会政策学|日本における「適応障害」患者数の増加
適応障害の原因
適応障害は、期待や不安、緊張などのストレスにさらされ続けることで、精神に不調をきたして発症します。原因であるストレスは、進学や就職、転勤、異動などにより発生することが多いです。
厚生労働省の精神障害の労災認定を参考にすると「プロジェクトリーダーに昇格後、業務が難航して時間外労働が90〜120時間続いた」などが、適応障害の発症の要因となった事例があります。この事例は、昇格後のプレッシャーや労働による心身への負担が、長期間続いたため適応障害を発症したと考えられるでしょう。
適応障害は「業務上の負担が強く、業務以外で顕著にストレスを与える要因はない」と判断されれば、労災認定できる可能性があります。
参考:厚生労働省 精神障害の労災認定
適応障害の症状
ここからは、適応障害の症状の詳細やセルフチェック方法、うつ病との違いについて解説します。
症状は「心」「体」「行動」に分けられる
適応障害の症状は以下のように分けられます。
症状 | 詳細 |
---|---|
心の症状 | ・気持ちが落ち込む ・不安や焦りがある ・やる気が出ない ・集中力が低下している ・楽しさを感じない |
体の症状 | ・便秘・下痢 ・腹痛 ・体のだるさ ・疲れやすさ ・吐き気 ・頭痛 ・めまい ・肩こり ・不眠 ・食欲の低下 |
行動の症状 | ・人との関わりを避ける ・遅刻や無断欠席をしてしまう ・電話に出れない ・暴飲暴食をしてしまう ・食事ができない ・無謀な運転をする ・人間関係でトラブルを起こしやすい |
日常生活や出勤前後、仕事のことを考えたときに上記のような症状が出現する場合は、適応障害の可能性があります。上記の表をセルフチェックリストにしていくつか該当する場合は、医師に相談してみても良いでしょう。
うつ病との違いは波があるかどうか
適応障害とうつ病の違いは、症状に波があるかどうかです。例えば、適応障害において仕事が原因となっている場合は、勤務の日に不安や緊張が強まり、めまいや手の震えなども出現することがあります。
一方で休みの日は、気分が楽になり趣味を楽しめることも。このように適応障害は、原因から離れると症状の改善が多くみられます。
うつ病は、原因から離れても気分は晴れず趣味なども楽しめません。原因から離れても、憂うつな気分や食欲の低下などが続く場合は、うつ病の可能性が高いでしょう。
適応障害になりやすい人の特徴
適応障害はだれもが発症する可能性のある病気。以下のような特徴のある人は、適応障害を発症しやすいといわれています。
- 真面目である
- 責任感が強い
- 心配性である
- 気持ちの切り替えが苦手である
- 他人の目を気にしてしまう
- ストレスへの対処が苦手である
- 何事も完璧にこなそうとする
以上のような特徴に加えて「仕事の内容が自分に合っていない」「職場の人間関係がよくない」「業務が多く休めない」などが続くと、適応障害の発症リスクが高まってしまいます。
適応障害の診断基準
適応障害の診断基準は、アメリカ精神医学会が作成している精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)によると、以下のように示されています。
- ストレスの原因がはっきりしている
- ストレスの原因に反応して3ヵ月以内に症状が出現する
- 以下のどちらかが示される
- ストレスの原因により著しい苦痛がある
- ストレスの原因により社会生活に著しい障害が起きている
- 他の精神疾患の基準を満たしていない
- 人が亡くなったことに対する反応ではない
- ストレスの原因がなくなると症状が6ヵ月以上続かない
以上はわかりやすくするために、文言を変更しています。
適応障害の主な3つの治療方法
適適応障害の主な3つの治療方法は以下の通りです。
- 環境調整|ストレスを除去する
- 精神療法|ストレスへの対処方法を身に付ける
- 薬物療法|症状を和らげる
それぞれ解説します。
1.環境調整|ストレスを除去する
環境調整とは、ストレスを除去するために生活環境を調整することです。例えば、職場が原因となっている場合は以下のような方法があります。
- 休職や転職をする
- 業務量を調整する
- 原因となる人間関係を遠ざける
上記の方法は、職場によって難しいこともあるでしょう。その場合は次の章で解説する「ストレスへの対処方法を身に付ける」ことが必要です。
2.精神療法|ストレスへの対処方法を身に付ける
ストレスの対処方法を身に付適応障害で実施する精神療法(心理的手段を用いて心身に働きかける治療)は、下記の通りです。
認知行動療法 | ものの考え方や受け止め方を修正する療法。本人のストレスに対する受け止め方のパターンに対してアプローチする。 |
問題解決療法 | 現在抱えている問題と症状に焦点を当てて、本人と精神科医や臨床心理士と協力して解決方法を見つけていく療法。 |
認知行動療法と問題解決療法どちらも、精神科医や臨床心理士が支援しながら治療を進めますが、治療を受ける本人が主体的に取り組むことが重要です。
3.薬物療法|症状を和らげる
適応障害における薬物療法の目的は、症状を和らげることです。例えば、不安や不眠には「不安を和らげたり眠りやすくしたりする薬」、抑うつ気分には「気分の落ち込みを改善する薬」で対処します。
適応障害の薬物療法は、根本的な問題を解決できるわけではありません。薬物療法だけでは治療がうまくいかないこともあります。前述した環境調整や精神療法を進めて、ストレスを除去する、またはストレスへの対処方法を身に付ける必要があります。
適応障害を発症した際は「仕事で無理をしない」または「休職を検討する」
適応障害は、環境調整や精神療法、薬物療法などを適切に進めれば予後は良好です。しかし、症状が改善したからといって無理をしないことが大切です。すぐにもとの生活に戻ると再発する可能性があるためです。
復職や転職を検討する際は、就労移行支援やリハビリ出勤などの制度を活用する選択肢もあります。医師や家族、職場の人と相談しながら、無理のない職場復帰を進めることが大切です。
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